社員がAIを使わないのは、使い方が分からないからではなく、感情の問題です。
長年ひとりで仕事を回してきた人ほど、「AIに知識を渡したら、自分の居場所がなくなる」と感じます。
ここを無視して、マニュアルや過去資料をAIに読み込ませても、現場は動きません。
「あの人が休むと、仕事が止まる」
そんな会社が属人化を減らすとき、最初に向き合うべきなのは、AIの性能ではありません。
知識を持つ人の感情です。
今日は、ベテランの価値を奪わずに、その経験を会社に残していく方法を書きます。
「あの人が休むと止まる会社」は、AIを使う余地が大きい
中小企業のAI活用で、ぼくがいま一番可能性を感じているのが、属人化の解消です。
工場の機械に不具合が起きたとき、どこを見ればいいのか知っている人。
経理や総務の細かい処理を、長年ほぼ一人で回してきた人。
取引先ごとの事情や、社内の決裁ルートをすべて把握している人。
こういう人は、会社にとってものすごく大切です。
ただ、その人がいないと仕事が回らない状態は、会社にとって大きなリスクでもあります。
若手が育たないというより、育つために必要な情報が、誰か一人の頭の中から出てこない。
きれいに言えば「ナレッジ共有の課題」ですが、実際はもっと泥くさいです。
電話してもつながらない。
聞いたら「前にも教えたよね」と言われる。
結局、よく分からないまま作業が止まる。
たぶん、そういう話です。
AIに残したいのは、答えではなく判断の基準です
その人が持っている知識や判断基準を、AIに学ばせたいですよね。
過去の資料、マニュアル、メール、トラブルの記録、本人へのヒアリングなどを整理して、困ったときに質問できる状態をつくる。
そうすると、若手社員は同じ質問を何度しても怒られません。
初歩的なことでも聞けますし、自分のプライドや周囲への遠慮もいりません。
「このエラーが出たとき、最初に確認する場所はどこですか」
「この取引先への見積もりは、通常と何が違いますか」
「この申請は、誰の確認を通せばいいですか」
AIがいつでも答えてくれるだけで、成長の速度は大きく変わります。
ただし、残すべきなのは、単なる答えだけではありません。
「なぜ、その判断をしたのか」
「どこを見て、危険だと感じたのか」
「例外が起きたとき、何を優先したのか」
こうした判断の基準まで残さないと、AIは表面的な回答しかできません。
もちろん、ChatGPTを社員全員に配って「自由に使ってください」と伝えるだけでは、こうはなりません。
その会社の仕事を理解し、誰の知識を、どんな形で残すのかを決めて、少しずつ調整していく必要があります。
ここを飛ばすと、「AIは思ったより使えないね」で終わります。
何回目だよ、という感じですが、AIは入れただけでは働いてくれません。
「私の代わりを作るんですか」と思われたら失敗する
でも、属人化を解消したいからその人をAI化する。そんな簡単な話ではありません。
知識を持っている本人の感情が邪魔をします。
何十年もかけて身につけた経験を、突然「AIに覚えさせましょう」と言われる。
本人からすれば、自分の仕事や居場所を奪われるように感じてもおかしくありません。
「私の代わりを作るんですか」
そう思われた瞬間、協力してもらうのは難しくなります。
でも、この感情は、誰しも理解できるものではないでしょうか。
AIは人間より忘れませんし、感情に左右されず、膨大な情報を整理できる。それは頭では理解できます。
でも、だからと言って、ポンっと丸ごとAI化されてしまっては、その人が何十年も会社に貢献してきた価値が消えてしまいそうな気がします。
ベテランの価値を奪わず、知識を残す3つの方法
では、どうすればいいのでしょうか。
「あなたの代わりを作りたい」と伝えない
「あなたが積み上げてきた経験を、会社に残したい」と伝えます。
役割の消滅ではなく、役割の承継と位置付けます。
こうすることで、その経験を次の世代に残せること自体が、新しい役割になります。
言葉は似ていますが、受け取られ方はまったく違います。
知識の提供を評価に反映する
ヒアリングに時間を使ってもらうなら、その時間を業務として確保する。
知識を整理する役割を与えるなら、評価や報酬にも反映する。
善意だけで協力を求めると、続きません。
最初からすべての業務をAI化しない
毎週何度も聞かれている質問。
担当者が休むと止まる作業。
過去の資料を探すだけで時間がかかる業務。
まずは一つ選び、小さく試します。
小さく成果を出してから広げたほうが、現場の抵抗も減ります。
人間を消すためではなく、経験を残すために使う
AIだけでは伝えられないものもあります。
失敗したときの悔しさ。
取引先との距離感。
現場で危険を察知する感覚。
若手が落ち込んでいるときに、かける言葉。
こういう温度は、人間からしか受け取れません。
一方で、人間だけに任せると、知識を抱え込んでしまったり、「新人にはまだ早い」と情報を渡せなかったりすることもあります。
だから、どちらか一方ではありません。
AIが何度でも知識を説明し、人間が経験の背景や感情を伝える。
この両方がそろって、初めて若手が育ち、ベテランも次の役割へ進めます。
属人化に悩んでいる企業を紹介してください
ぼくが企業向けのAI研修でやりたいのは、便利なプロンプトを何十個も紹介することだけではありません。
その会社の頭脳をAIで拡張することで、今起こっている大きすぎる時代の変化を乗り切るための体力をつけて欲しいのです。
会社内で誰に仕事が集中しているのか。
誰に休まれると困るのか。
何度も繰り返されている質問は何か。
若手がどこで止まっているのか。
そこから、AIに任せられる知識や作業を一緒に切り出していきます。
AIの導入は、結局かなり人間くさい仕事です。
こういうサポートが必要な企業は、まだまだたくさんあると思います。
ぼくは、そんなAI研修や業務改善をやっていきたいと思っています。
あなたが知っている会社にも、「この人が休むと仕事が止まる」という業務はありませんか。
まずは、一度話を聞かせてください。
ペスハムがこれまでどんなことをやってきたか、その経験が今にどう生きているかは、こちらにまとめています。



